半導体開発エンジニアの仕事は多岐にわたります。なぜなら半導体製品自体様々あり、またその製品のどこを担当するかによって業務内容も異なります。更に会社によっても異なります。
今回は自動車用半導体製品の開発を統括している部署の仕事紹介をします。私が働いている会社の業務に特化しているので、全ての半導体開発エンジニアがこの仕事をしているわけではないこと、そして会社によって組織も異なるので予めご了承ください。また同じ会社でも製品によっては開発のプロセスが異なったりするので、これはあくまでも一例であることをご承知おきください。
学生の方の進路選択や半導体の仕事に興味を持たれているかたなど、雰囲気だけでも感じて頂ければと思います。
対象製品
製品は自動車用半導体製品で専門的に言うと、トラクション用インバータに搭載される半導体モジュールです。製品の画像が著作権の関係で使用できないため、私の手書き概略図で大変申し訳ないのですが、イメージができれば幸いです。

この半導体製品は電気自動車やハイブリット車に搭載されている製品です。タイヤを動かすためにモーターが使用されていて、そのモーターを動かすためにインバータという装置があります。そのインバータに使用されているのが、この半導体モジュールになります。

仕事の概要

上の画像は業務の概要になります。
製品の開発は個々のパーツを開発するチームを統率し、そのパーツを組み立て製品(あるいは試作品)にするまでが大雑把な業務内容になります。
01. お客さん(製品を搭載する自動車部品メーカーや自動車メーカー)との技術的な窓口を担当します。具体的にはお客さんの欲しい製品性能や大きさ(これらをスペックと呼ぶ)、お客さん側の製品(自動車)の開発スケジュールをヒアリングし、
02. 試作品提出の予定と製品化まで開発の日程の提出をします。そして試作品の電気特性、機械特性、熱特性などの説明や仕様書の提出を行います。
03. 試作品を作製するためには、それぞれのパーツが必要なので、各パーツを開発するチームに試作スケジュールを提出し、パーツの準備を依頼します。また試作品を作製する工場のラインのスケジュールを組んでもらうよう依頼します。この試作品が予定通りに作製できているかどうかをフォローすることも仕事です。
試作品が完成したら電気特性、熱特性、機械特性、信頼性評価を行います。それぞれの特性評価のデータをまとめることも仕事です。
04. 特性評価で問題がなかった試作品はお客さんへ出荷します。お客さんは日本のみならず世界にもいるので、梱包はしっかり行います。
お客さんから試作品の評価結果のフィードバックを反映して、試作を重ねて製品化へ向けて性能や外形などブラッシュアップします。
性能、外形が決定し製品となります。製品は量産化するまでは開発の仕事になります。それ以降は生産部隊へと仕事が移ります。
05. 製品には新技術を搭載することがほとんどです。その新技術が他社に侵害されないように特許の提案を行います。特許を自分で書く部署もありますが、特許特有の表現や書き方ああるので、多くの場合、知財(部署)が技術のアイディアをヒアリングし、知財部署が特許を書いたり、特許を書く専門会社へ外注したりします。その中で、新技術のアイディアを知財へ伝えることが仕事になります。
製品開発統括部隊はどんな性能の製品をいつまでに開発するのか全体像が見えるのがよいと思います。ただし、各パーツの特性など幅広い知識が要求されるので、様々な分野の勉強が必要だったりします。例えば半導体を覆うパッケージの材料や機械特性や熱特性などです。
半導体製品の開発は半導体そのもので製品を構成しているわけではないので、半導体を専門とする人だけで製品を開発しているわけではありません。なので、化学系を専攻してパッケージの開発に従事する人もいます。