半導体エンジニアはリモートワークが可能か?体験して感じたこと

ワーク
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 コロナがきっかけでリモートワーク(在宅勤務を含む)を実施する企業が大幅に増加し、今やリモートワークができることを条件に転職先を探す人もいます。パソコン一つあれば出来る仕事であればリモートワークが可能ですが、製品開発をする職種はリモートワーク可能かどうか疑問に思う方もいると思います。この投稿では私がリモートワークを経験して、実際のところ半導体エンジニアはリモートワークは可能かどうかも含め感じたことを書きたいと思います。

リモートワークは可能だが、完全リモートワークは不可

 結論から言うと、上の表題の通りリモートワークは可能ですが、完全リモートは不可能だと思います。やはり実験室でしかできない業務やクリーンルーム(埃が少ない部屋)での作業が必要な場合がどうしてもあるので、完全リモートはできないと思います。ただパソコンがあれば可能な業務もありますので、それらの業務を行う分にはリモートが可能です。それでは私がリモートワークでオフィスでするよりもはかどった仕事について書きます。

リモートに向く業務

 ほとんど誰にも相談せずに自分ひとりでもくもくと進める業務がリモートワークに向いている業務だと思いました。オフィスにいると何かしら声をかけられたりするので、その際に作業を中断しなければならないことが非効率だと思うことはあります。リモートだとよっぽどのことがない限り、同僚からの連絡はないので業務に集中することができることができます。下記に挙げた業務が集中して一気に行えると業務効率が上がるものになります。

特許提案関連の書類作成

 特許のアイディアを資料としてまとめたり、作成された自分の特許の内容を確認する作業は間違いがないようにしっかり行う必要があるので集中力が必要です。こういう作業は誰にも声をかけられない環境で一気にやってしまうことが良いです。

他社の特許の確認

 他社の特許の確認は自社の技術を他社が侵害していないか、またその逆はないかを確認するために行う作業です。知的財産部門から他社の特許確認依頼がくるのですが、その量は毎月膨大な量で有識者で確認する特許を振り分けます。自社、自部門には全く関係ない技術の特許もありますが、かなり自社製品に近い技術で際どい特許もあるので、気を引き締めて確認します。

設計ルールの確認

 新製品の開発に従事していると新技術を取り入れることが多く、またお客さんのニーズにより大きさや形状が既成品と異なることがあります。そのような要素が含まれた開発中の新製品は設計ルールに従っているかどうかを確認する必要があります。そもそも設計ルールを知らないと開発ができないので、しっかり確認する必要があります。

測定データのまとめ

 試作品の測定(電気特性)データなどまとめます。特性をグラフ化し、良品率などの統計をまとめます。測定する試作品は1つではなく、何十個、多い時は何百個の試作品のデータをまとめる必要があるのでデータまとめを自動化するツールを用いてまとめますが、その結果どうなのかという判断をできるようにデータをまとめることが仕事です。

契約書の確認

 私の場合はお客さんとの契約、開発における秘密保持契約書の確認になります。お客さんは国内以外にも海外にもいますので、英語の契約書は専門用語が多くてかなり読むのが大変です。ただし契約書を専門に確認する部署もありますので、私は大まかに確認して上司に要約するという仕事をしています。

自分ひとりで作成可能な資料ならリモートの方が効率的

 資料作成はその内容によってリモートワークで集中して作成する方が効率的であったりしますが、同僚に質問、相談を多く必要とする資料作成はやはりオフィスで作成する方がスムーズに作成できます。資料にはお客さん用のプレゼン資料、社内用に開発状況を説明する資料など多岐にわたります。

 データまとめの資料はデータの置き場所さえ分かっていれば、リモートで作成できます。ただそのデータを見た時に疑問点が出てくることもあるので、その場合は関係者に確認の必要があります。この確認の作業がオフィスにいる方が早く済む場合があるので、なかなかリモートで行おうとする人は多くいません。ですがリモートでもメールや電話で確認も可能なので、確認するまで時間に余裕があればリモートで行いたい仕事です。

結局リモートができるように環境さえ整っていれば実験以外は可能

 以前は外部からファイルサーバーへのアクセスはセキュリティの面から制限されていたのですが、コロナになり、リモートワークの需要や世の中の動きもあり、ファイルサーバーはクラウドへ移行されインターネット環境があればアクセスが可能になりました。なので基本的には私たち半導体エンジニアも実験、測定をする以外はリモートワークが可能になります。

 ただ実際問題、必要な資料がクラウドに保存されていないケースもあり(本当はNG)、あの資料どこにある?って作成者に聞くことも珍しくはありません。その場合作成した資料が作成者のパソコンに置きっぱなしの状態が99%ですが(パソコンにデータを置いておくのもセキュリティの面からNG)、これもファイルサーバーを使用していた時代、資料の上書きが失敗していて途中から作成し直しということもあったので、その名残もあってパソコンにデータを置きっぱなしにする人がいます。

 コロナが終息しつつある現在、職場ではリモートで仕事をする機会が少なくなり、リモートワーク推進の勢い弱くなっています。リモートでも仕事は可能なので、あとはリモートワークを日常的に行える環境の構築をどうするか、その労力を割くかどうかは自分たち次第だとこれを書きながらしみじみ思います。

 オフィスでもリモートでもいつも同じ場所で仕事をするとかえって集中できない場合があります。こういう時にフレキシブルにどちらの場所でも仕事ができると、新鮮な気持ちになり集中力が上がって効率的に仕事ができるのにと個人的に思っています。