エンジニアとしてキャリアを積む中で、「もう限界かもしれない」と涙した夜は一度や二度ではありません。
しかし、15年経った今なら分かります。つらさの正体は「仕事量」そのものではなく、自分を追い込んでいた「心の余裕のなさ」だったのです。
今回は、私が新人の頃に抱えていた焦り、体に現れた悲鳴、そしてドイツで出会った新しい価値観によって「自分らしい働き方」を確立するまでの軌跡を綴ります。
1. 焦りと完璧主義が、自分を追い込んでいた新人時代
入社2〜3年目。私はとにかく焦っていました。
「早く一人前にならなければ」「周りに置いていかれたくない」 そんな強迫観念から、できないことを無理に抱え込み、結果としてミスを繰り返しては自信を失う……という負のループに陥っていました。
一つのプロジェクトが終わっても、休む間もなく次の波がやってくる。
夜寝ても、夢の中で回路図やスケジュール表を追いかけている。
心も体も24時間仕事に支配され、他人のちょっとした言動にイライラしては、そんな自分をまた責める。当時は仕事そのものよりも、余裕を失ってギスギスした「人間関係」が何よりつらかったです。
2. 体が発したSOS:健康を失って気づいたこと
無理を重ね続けたある日、ついに体が悲鳴をあげました。
卵巣が腫れ、生理の出血が止まらない。婦人科の医師から告げられたのは「過度なストレスの影響」という言葉でした。
眠りについてさえ、仕事から解放されることはありませんでした。夢の中でまで、私はずっと会社で働き続けていたのです。
薬を服用しながら、「私は一体、何のために身を削って働いているんだろう?」と自問自答しました。
「健康を犠牲にしてまで成し遂げるべき仕事なんて、この世にひとつもない」
当たり前のことですが、当時の私はそこまで追い詰められないと、自分を大切にすることができなかったのです。
ドイツで知った「定時退社」は、プロの証という価値観
そんな私の転機となったのが、ドイツへの留学でした。
現地で目の当たりにしたのは、「残業する人は仕事ができない人」という価値観です。
- 効率への徹底したこだわり: いかに短時間で成果を出し、さっと帰るか。
- 人生を楽しむための仕事: 定時で帰って家族や自分の時間を楽しむことが、翌日のパフォーマンスに繋がるという確信。
帰国後の私は、周囲から「定時で帰る人」というキャラで見られるようになりました。もしかしたら陰口を叩かれているかもしれませんが、全く気になりません。
なぜなら、時間を意識して集中することで仕事の質は上がり、心身の健康も取り戻せたからです。以前のようなストレスによるやけ食いもなくなり、今は翌朝を清々しい気持ちで迎えられています。
私は「マラソン型」。自分を知れば、戦い方が変わる
半導体業界にいても、すべての仕事が自分に合うわけじゃありません。
新人のときに検査工程の実習に入ったことがありますが、単純作業がどうしても苦手で…。時計ばかり気になって、全然時間が過ぎない。「つまらない」がしんどかったです。
顕微鏡で製品となったウェハに傷はないかを確認する作業だったのですが、顕微鏡で見ているうちに睡魔が、、、睡魔との戦いはなかなか辛かったことをいまだに思い出します。
一方で、今の「開発統括」のように、複雑なパズルを解くように全体を調整する仕事は、忙しくても大きなやりがいを感じます。
何でもすぐに器用にこなせる「短距離走型」のエンジニアを見て、自分と比較する必要はありません。
私は、時間をかけてじっくり理解を深め、一歩ずつ進む「マラソン型」。
自分のタイプを認め、自分に合ったスピードで走り始めたことで、ようやく仕事が「楽しい」と思えるようになりました。
おわりに:焦らなくて大丈夫。あなたのペースで成長すればいい
もし今、仕事がしんどくて、自分を見失いそうになっている方がいたら伝えたいです。
「焦らなくて大丈夫。あなたはあなたのペースで、着実に育っています」
まずは、自分を客観的に知ることから始めてみてください。
他人と比較するのをやめ、自分なりの「持続可能な働き方」を見つけたとき、エンジニアという仕事は一生をかける価値のある、最高に面白い探求の場に変わるはずです。


